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T-34 maniacs

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T-34　1942年型および1943年型　キーロフスキー工場製 　（川畑英毅）

　KVやISなど，主に重戦車を開発・生産してきた工場．スターリングラード・トラクター工場での生産がストップする危険性が出てきたため，ウラル重機械工場とともにT-34最終組立て工場として新たに指定され，1942年８月22日より生産を開始した．ウラル重機械製作工場と違い，43年型，さらにはT-34/85の43年型に至るまでT-34の生産に関わった．

砲塔　（→砲塔バリエーション）

●OSPREY NEW VANGUARDのZaloga氏の記述に従えば，一体型砲塔はウラル重機械工場製，キーロフスキー工場製の車体に載せられたことになる．
　ウラル重機械製作工場の項で述べたような理由により，同型砲塔を載せ，前面装甲板が組継ぎになっているものは，キーロフスキー工場製であると推論できる．もっとも，今後「車体の組立ては複数の下請で行なって送られているので，装甲板の組み合わせ方は最終組立工場と関係ない」などという話になると，これら推論は一切おじゃん．
　なお，後述，車体後部の解説で述べるように，キーロフスキー工場製と思われる車体がソフトエッジ砲塔を載せている例がある．ハードエッジ型砲塔も使われている可能性はあるが，特定できる写真は見当たらなかった．

車体前部

●ウラル重機械製作工場製車体の解説で述べたように，一体型砲塔で43年型の場合，車体前面と側面の装甲板は組継ぎになっているものが多く，したがってこれがキーロフスキー工場製車体の特徴であると推論できる．青木伸也氏によれば，この特徴を持つ車体の場合，側部フェンダーの取れているケースがしばしばあり，同工場のフェンダー接合法に何らかの弱点があったか，非熟練工の手による工作であったかする可能性があるという．
●上記特徴を持った車体では，前面装甲板上端左右に跳弾リブが溶接されている．前面装甲板の組継ぎと合わせ，一見クラスノエ・ソルモヴォ工場製車体を思わせるが，それに比べ短いこと，側面にはないことなどの違いがある．

車体後部

●IN ACTION／P29上段右，および文林堂「T-34とスターリン戦車写真集」P53に，ソフトエッジ型の砲塔を持った1943年型の後ろからの写真が掲載されている．これら写真の車両を見ると，後面パネルは大型のヒンジ２個所でシャーシに結合されている． 　一見，クラスナエ・ソルモヴォ工場製車体に見えるが，どうもそれより，ヒンジそのものが大きい．IN ACTIONの写真では判りづらいが，文林堂の写真集のそれでは，明らかに，後面パネルがシャーシ後面装甲板より内側に来る接合法であり，クラスナエ・ソルモヴォ工場製車体とは違う．また，クラスナエ・ソルモヴォ工場製の特徴である，シャーシ後面中央の牽引シャックルもない．ちょうど，後の第174工場製T-34/85のようなレイアウトである．
　従来，1943年型は，ウラル戦車工場，スターリングラード・トラクター工場，クラスナエ・ソルモヴォ工場，チェリャビンスキー・キーロフスキー工場の４個所で生産されたと言われてきており，この場合，ウラル戦車工場は小ヒンジ３個所，スターリングラード・トラクター工場は41年型以来の旧式なレイアウトであるし，ウラル重機械製作工場は43年型を生産していないので，消去法により，この車両はキーロフスキー工場製以外では有り得ないことになる．
　とはいえ，この車体後面の特徴を持つ車体で一体型砲塔を載せている例や，逆に，車体前面の項で述べた，短い跳弾リブ付きの車体でソフトエッジ，もしくはハードエッジ砲塔を載せた例がいまのところ確認できないという，重大な推論上の「ミッシング・リンク」がある．
　さらには，最近ロシアで刊行された資料，ブローニェコレクツィヤ誌1999年第３号（T-34特集）によれば，第174工場でも，すでに1942年からT-34の生産に従事していたことになっており，これが本当であれば，上記ヒンジ形状の車輌は，第174工場製であると考えた方がより素直である．
　これについては，まだまだ確言できるまでの証拠に乏しいため，さらに今後の資料の登場を待ちたい．

装備品

●一体型砲塔を載せている車両では，前記ウラル重機械製作工場の項で述べたような独特の形状の筒形増加燃料タンク支持架を付けている（IA／P30右上）．

足回り

●ウラル重機械製作工場の項で述べたように，一体型砲塔搭載型は，後期500mm履帯＋後期ディスク型転輪の取り合わせが一般的．キーロフスキー工場製も，これがスタンダードである可能性が高い．